拙い文章の起こしかた

冴えない彼女の育てかた♭ 8話 「フラグを折らなかった彼女」の感想と「ToHeart」のアニメ版 1期 8話「おだやかな時刻」との共通点(御宅語 C93より)

どうも。すのーです。

かなり久々の更新となってしまい恐縮ですが、またちょこちょこ更新していこうかなと思います。

とりあえず、今回はコミックマーケットC93で御宅語さんでかかせてもらったものを再アップします。よろしければ読んでやってください。

(3年くらい前に書いたものなのでいろいろ?と思うこともあるかもしれませんが、そこはご容赦ください(笑))

 

 目次

 

まえがき

冴えない彼女の育てかた
 
この作品、御宅(オタクと読むらしい)ならば知らない人は少ないであろう。
 
WHITE ALBUM2」「パルフェ 〜ショコラ second brew〜」「この青空に約束を」などなど、有名PCゲームのシナリオを手がけた丸戸史明によるライトノベルデビュー作。
 
上記に挙げたゲームをプレイし、思い出に残っている人も多いのではないだろうか。
特に「WHITE ALBUM2」は当時、''ありそうでなかった恋愛のほつれ''を描き大ヒット。
プレイするには胃薬用意必須とされ、中には『曲を聴くだけで辛すぎてプレイできないよ!あんちゃん!(CV.花澤香菜)』などという声も。
 
かくいう私もこれらの作品に多大な影響を受けた所謂''丸戸信者''である。
 
さて、今回はそんな丸戸史明渾身のラノベデビュー作である「冴えない彼女の育てかた」の原作...ではなく、アニメについて...
 
しかも自分が一番心に残っている冴えない彼女育てかた♭(アニメ二期)の8話(※)(マジでピンポイントですんませんw)に焦点を当て、”語って”いこうと思う。
(冴かない彼女の育てかたという作品自体のあらすじはここでは省略します)
※以降8話とする

あらすじ

まず8話のあらすじとしては大きく分けて、
 
前半部:倫也が恵を視聴覚室に連れて行き、二人が所属するサークル「blessing software」の新作プロットについてプレゼンする場面。
 
後半部:英梨々の一件で停滞していた関係を修復した倫也と恵は、早速次回作の打ち合わせをすべく倫也の家に向かう場面。
 
の二部構成になっている。(詳しくは公式サイトなどを参照)

 

www.saenai.tv

 

ストーリー構成

原作7巻 5章のみ (P113〜P150)
今までアニメ1話あたりで、だいたい原作4章分を使った構成であったが、この8話は何と1章。
しかも登場人物は安芸倫也加藤恵の2人のみ。
原作のストーリーから外れることなく、アニメオリジナルを存分に取り込んだ構成になっている。
アニメの脚本は原作者丸戸自らが担当しているため、やはりアニメオリジナルも組み込みやすいのだろう。
昨今のアニメでは、原作者の意見一切取り入れずアニメが制作され、失敗すると叩かれるのは原作者という理不尽極まりない事態も
たまーにあるのかなと思う。
ちょうどタイムリーなネタだと今期アニメ、妹さえいればいいでこの話が取り上げられていたりした。
はあ京可愛いよ、京…/// (この記事カフェにて真顔で書いてます)
それは置いておいて、やっぱり原作者自らが脚本を書いてるアニメなんだから面白いに決まってんじゃんっ☆的な感じで次に進むことにする。
ここから先は8話の内容について書いていく。

メインヒロインの涙

前半部での視聴覚室でシーン。
 
『加藤、お前さ、本当に…..
''blessing software''のこと、好きでいてくれたんだな………っ!』
 
この倫也の一言で今作のメインヒロインである加藤恵は、今までずっと溜めてきた様々な感情が篭った”初めての涙”を流す。 
 
「な〜んだw メインヒロインなんだから涙流すのなんて普通じゃんw」
 
という声がどこからともなく聞こえてきそうではあるが、
それは違う。
 
この恵の涙には大きな意味があるのだ。
これまで冴えない、影が薄い、感情がない、何がメインヒロインだ、普通に存在忘れてたわ汗 などなど(最後の悪口じゃん...)
いくら罵声を飛ばされ続けようとフラットだったメインヒロインが、ついにここにきて自らの感情を表に出した。
最初から加藤恵一択だった自分としては(これを言うと色々と批判が)原作を初めて読んだ時、もちろん号泣したのだが、
アニメでは恵の声を担当されている安野希代乃さんの力の入った気の抜けた演技やBGMでさらに磨きがかかり、やっぱり号泣した。
きっとこの8話で今まで加藤恵に何の魅力も感じていなかった人でも、少しは心が動いたのではないか。
 
このように8話は加藤恵という人物を”冴えないモブ”から脱皮させメインヒロインレース首位独走状態までにさせた。
当時人気がなかった...とまでは言わないけれど、明らかにこの後から加藤恵の人気は群を抜いて上昇していたと思う。
 
しかし、丸戸自身は加藤恵というキャラにこんなにも人気が出るとは思っていなかったらしい。
 
ここからはあくまで私の想像だが、
 
原作4巻あとがき『僕はドSライターの謎の称号を〜』や、シリーズ開始当初の詩羽推しから考えると、
少なくとも1~4巻までは加藤恵というキャラをtrue endで使う予定は全くなかったのではないか。
(まあ丸戸といえば『WHITE ALBUM2』などの前歴があるし、どんな展開になってもおかしくはないんだけど…)
原作の表紙絵を改めて見てみると1巻が英梨々、2巻が詩羽と続いて、恵は...?というと7巻(内容的に8話に当たる)まで表紙絵として使われていない点からも
それは読み取れる。
 
5巻あとがきで『もはやこの作品の展開は個人(原作者)の判断だけでは何も決められず〜マジでこの作品のエンディング誰になるんだよ…』とあるが、
ここでエロゲとアニメの大きな違いを作者自らが実感しているのではないかと考える。
エロゲは自分の思う通りにシナリオを書くことができる、言ってしまえば自由度が比較的高い。
しかしライトノベルは違う。ライトノベルは売れなければならない。アニメ化され、メディアミックスが展開され商材として人気が出なければならない。
現在ライトノベル新人賞での選考基準もそれが前提である。
この5巻あたりで、1期アニメ化が決まり作品も有名になり始める。
→どの女の子を本当のメインヒロインにするか丸戸の中での葛藤
 
そして7巻(8話の内容に当たる)が発売され、今までの影の薄かった加藤恵の殻を破り爆発的な人気が出た。
→おそらく多方面から恵ルートで行こうという声があったと推測される
 
8巻あとがきで『冴えない彼女であるはずの加藤が一番目立っているこの状況は自分の中でも結構想定していなかった事態』とあることから、
おそらくこの時点であまりにも恵の人気が上昇したため、メインは恵ルートで行かざるを得ないと考えていたのではないかと思う。
 
以上のような単なる一般オタクの妄想はまあ置いておいたとして、あとがきに書かれていることは事実であるし、
何らかの力が働いてメインは恵ルートで確定したのである。
結果的に冴えない彼女の育てかたという作品は恵とのハッピーエンドで完結したし、それがtrue endで私自身も十分満足した。
 
ただ、欲をいえば、この作品がエロゲとして発売されていたらどんな作品になっていたんだろう...と考えてしまう。
 
丸戸が自由にこの作品で脚本を書いたらと…と考えると鳥肌が立つのは私だけだろうか。
もし、あの時、恵が英梨々を許さなかったら…
もし、英梨々と詩羽が紅坂朱音の誘いを断っていたら…
などなどゲームになった場合として考えられる分岐は大量に存在するのだが、この話をするとまた長くなってしまうので、また何か機会があれば言及したいと思う。
 
すごい話が脱線してしまったが、とにかく加藤をメインヒロインとして確定させた原作7巻の内容を、アニメでできる100点、いや100億点の出来で表現して見せたのだ。それが8話なのである。

8話がいかにすごいのか

後半部、次回作の打ち合わせという程で倫也の家に向かう二人。
 
この後半部だが、原作7巻P143〜150たった7ページ分の内容を後半部全てを使って描いている。
7巻のメイントピックはあくまでも上記で記した”メインヒロイン加藤恵の涙”である。
しかし、8話の構成としてはそのメイントピックを前半部に持っていき、
後半部では、7巻のメインの話ではない、というか原作ではおまけと言っても過言ではない、たった7ページを
アニメオリジナルを組み込むことによって膨らませ後半部に持ってきている。
 
ではなぜ原作ではおまけである部分を、わざわざ物語の大きなターニングポイントとも言えるこの8話に持ってきたのか。
 
以前丸戸は某インタビューにて
『冴えカノはアニメと原作がお互いを補完すると一番いい楽しみ方ができるんじゃないかと思います。』
と答えていることから、原作ではフューチャーできなかった部分をアニメで描こうという旨が読み取れるだろう。
つまり『原作のおまけをストーリーのメインにしたら、原作のが面白いとか言ってるやつも満足するやろ?w』
的なメッセージであると私は考えた。
 
さらには、アニメ二期で加藤恵の登場回数やセリフを8話まで大幅に少なくすることにより、
8話での加藤恵のヒロイン力の爆発に繋げている。
 
8話の加藤恵は今まで見せたことのない多彩な表情したり、今まで見せたことのない面倒くささなんかも倫也に見せる。
 
中でも私が心に残ったのは、就寝前、恵が倫也に言った
『そうだね…ねぇ安芸くん、明日になったら今のわたし、忘れてね?』いうセリフ。
 
この時の恵の表情と言い方が本当に素晴らしかった。(このシーンだけリアルに50回は見ました)
可愛いとか、萌えとか、そんな簡単な言葉では到底言い表すことができないまでに。
 
ここまで感情移入できるのはやっぱりキャラ設定のおかげである。
元々が主人公にデレデレのありきたりヒロインでこの8話をやっても感動とかそんなものは一切生まれないだろう。
後半部でやっていることは簡単に言ってしまうと、主人公の家で料理してゲームしてお風呂入って寝るだけ。
主人公への告白もない、ましてやハプニングでキスとかいうあるあるお決まり展開もない。
ドキドキするシーンなんか一つもないのだ。
 
そういう展開を求めていた視聴者からすれば不満の声だって出てくるかもしれない。
 
しかし、加藤恵だから、存在感がない、感情がフラットと散々言われてきた彼女だからこそ、そんな些細なやりとり、仕草に可愛いを超えた感動が生まれてくるんだと思う。
これに関してはもうキャラ設定の勝利である。
 
以上のように今まで出番がほぼなく、アニメでは空気であった加藤恵という準モブキャラを
”冴えない”、”影が薄い"というキャラ設定とシーンに合わせて初披露のキャラソン(ETERNAL♭)を流すなどの演出により
一瞬にして、誰もが羨むようなメインヒロインにしてしまう。
 
しかも原作のおまけ部分で。
 
これが8話の本当の凄みだ。
 
まさにキャラの特徴、ストーリー展開など全てを把握している原作者が脚本を書いたことで実現できた大作である。

アニメToHerat 1期 8話との共通点について

 これまでの内容で8話の魅力がおわかりいただけたかとは思うが(おわかりいただけなかったら無視してください)、当然私はこの8話が大好きで何度も
見直していた。そこである作品との共通点が多くあることに気づいたのである。
その作品というのが、「ToHeart」である。
ToHeart」といえば、個性豊かなヒロインの魅力と、それを支えるシナリオの質の高さで幅広い層から支持を集め、
Leafを一躍アダルトゲームのトップブランドに押し上げる大ヒット作である。知っているという御宅(オタク)も少なくないであろう。
そんな「ToHeart」のアニメ版 1期 8話「おだやかな時刻」(※)と、今回取り上げている「冴えない彼女の育てかた♭」 8話 「フラグを折らなかった彼女」(特に後半部)には多くの共通点がある。
※補足としてこの回の内容を超間接的に説明すると、主人公藤田浩之が幼馴染でヒロインの神岸あかりの家でテスト勉強をする。おわり。である。
(バカにしているわけではなく本当にこの内容しかないので気になる方はぜひ視聴してください)
 
以下に共通点を挙げてみる。
 
・1話まるまる通して登場人物が主人公とメインヒロインの二人のみ(ToHeartの方は長岡志保の声のみ出演あり)
・部屋で二人きり
・ヒロインの手作り料理
・キスなどのあからさまなイチャイチャ描写一切はなし
・穏やかな日常
 
このような数ある共通点や、物語の中盤から終盤へと繋がるこの大事な8話という場面であえて登場人物を絞り、
二人だけの閉ざされた誰にも邪魔されない空間(主人公orヒロインの自宅)で、平穏な日々を送るという大胆なストーリー構成の類似から
考えると、丸戸は「ToHeart」1期 8話を意識して「冴えない彼女の育てかた♭」 8話 を作ったのではないかと私は思う。
 
冴えカノという作品という自体オマージュ、メタ、パロが大好きという点から、
どんな作品がその対象になってもおかしくはない。
実際、「ToHeart」と同じくLeafから発売され先程も紹介した「WHITE ALBUM2」のことを大きく意識して作られているのが顕著にわかるだろう。
(主人公の名前や季節感など)
丸戸も自身が担当した戯画作品3作全てで同一の大学を登場させ世界観を統一させたりするなど、作品もじりが大好きなことから
ToHeart」も参考にしているということは可能性として十分にあり得る。
しかし、ネットなどで調べてもそのような記述は一切ないし、このような考察をしている人も私以外にいなかった。(もし見つけたら僕に連絡ください)
ただ、こんな風に考察すること自体が御宅(オタク)冥利に尽きるというかなんというかなので、私自身、考察の結果が正解かどうかは特に気にしないこととしている。
 
自分の大好きな作品について批評し考察する、その時が一番"御宅語”していてどうしようもなく楽しいのだから。

 

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